プレイボーイ、好色、女好きそんな男性が世の中にはいる。

だが、そんな言葉では言い表せない男、それがドン・ジョバンニだ。

 

オペレで好色な人物というと、「リゴレット」の登場人物の1人のマントヴァ侯爵が有名だが、このオペラの主人公はあくまでも、その侯爵に仕える道化のリゴレットであるし、作曲家であるヴェルディもそのつもりで「リゴレット」を作ったことは確かだろう。

だが、子供の頃から「神童」と呼ばれていたモーツァルトは、この途方もない女好き「ドン・ジョバンニ」を主人公にしてオペラを作った。

結果として、現代まで残る有名オペラの1つとなり、数々の名曲に彩られながらも、演出家の才能を刺激するこの作品は人々に愛され続けている。

 

オペラ「ドン・ジョバンニ」の簡単な話の流れ、内容としては、スペインだけでも1003人の女性を抱いてきたドン・ジョバンニが、いつも通りに夜ばいをかけていると、その女性に逃げられ、さらにはその父親までが現れてしまう。ドン・ジョバンニはその年老いた父親を刺し殺し、反省することなく、また女遊びを再開する。

この夜ばいされた女性が、ドンナ・アンナ、父親は名前はなく騎士団長だった。ドンナ・アンナは恋人のドン・オッターヴィオと復讐を誓う。

一方で、女遊びを続けるジョバンニと従者のレポレッロ、かつて抱いた女に再開しながらもそれをあしらい、、結婚式に乱入し花嫁を口説き、と彼の行動は激しさを増していく。そんななか、彼の屋敷を1人の訪問者が訪れる。それは動く石像。それも殺した騎士団長と同じ顔した石像だった。

恐れを知らないジョバンニは、人知を超えた石像に怯まなかったが、石像は改心する様子のないジョバンニを見て、彼を地獄へと引きずり込み、幕が降りる。

 

結末でお気づきの方もいるかもしれないが、このオペラはある説話をモデルとして作られたもの。つまりは、女遊びは身の破滅を招く、という教訓を示すための説話だった。だが、ただの説話的オペラなら現代まで残ることがなかっただろう。このオペラには、人々を惹きつける魅力があり、一度見ると忘れられないオペラの1つであることは間違いない。

オペラの登場人物、細かい内容、あらすじ、解説等は下に続きます。

 

【主な登場人物】

ドン・ジョバンニ(バリトン):好色な貴族。ヨーロッパ中の多くの女性と関係をもったことがあり、そのような女性を全て従者のレポレッロにカタログとして記録している。

レポレッロ(バス):ドン・ジョバンニの従者。ジョバンニの破天荒な行動に呆れつつも、彼の夜遊びをサポートしている。妻がいるらしいが、彼も変わらず女好き。

ドンナ・アンナ(ソプラノ):騎士団長の娘であり、ドン・オッターヴィオの許嫁。

騎士団長(バス):ドンナ・アンナの父親。

ドン・オッターヴィオ(ドン・オッタービオ、テノール):ドンナ・アンナの許嫁

ドンナ・エルヴィーラ(ソプラノ):かつてドン・ジョバンニと関係を持つが、捨てられた女性。身分のある女性だったようだが、ジョバンニを追いかけてきた。

ツェルリーナ:(ソプラノ):マゼットの新婦

マゼット:(バス):ツェルリーナの新郎

 

あらすじ

第一幕

明け方、日がまだ登ろうとしないスペイン、セヴィリア。騎士団長の屋敷の前で監視をしているレポレッロがぼやていると、女性の叫び声とともに、ドン・ジョバンニとドンナ・アンナが現れる。ドン・ジョバンニから操を守ろうとする抵抗するドンナ・アンナのもとへ父親である騎士団長が現れるが、彼の身体はジョバンニの剣に貫かれてしまう。ジョバンニと、彼の行動に驚いたレポレッロは足早に去り、アンナが許嫁のドン・オッターヴィオと共に現れる。2人は冷たくなった騎士団長を見つけ、父親を殺した男への復讐を強く誓う。

 

逃去ったジョバンニとレポレッロ、レポレッロが騎士団長殺しを問いつめ言い合っていると、ドンナ・エルヴィーラが現れる。早速ジョバンニは背後から口説こうとするが、過去に関係を持った女だと知って、レポレッロに後始末を任せ彼は走り去る。ジョバンニがいなくなったことに怒るエルヴィーラだが、レポレッロは彼女に「主人が関係を持った女は何もあんただけじゃない」と恋のカタログを読み上げる※1

 

ある村の結婚式。そこでは村人に囲まれて新婦のツェルリーナと新郎のマゼットが楽しげに踊っている。そこへジョバンニが現れ、村のみんなを自分の屋敷に招待したいと言い出す。もちろんその本当の狙いはツェルリーナ。ツェルリーナをエスコートしようとするジョバンニを見て、マゼットはそれを阻止しようとするが、帯刀しているジョバンニに逆らえず渋々諦める。マゼットが去るとジョバンニは彼女をエスコートする※2

だが、そこに再びエルヴィーラが現れる。彼女はツェルリーナをジョバンニから遠ざけ、ツェルリーナに警告までしてしまう。

夜ばいで騎士団長を殺してしまい、思い通りに事がいかないジョバンニの前にアンナとオッターヴィオが現れる。彼らは、騎士団長殺しの男の顔までは暗闇のせいでわからなかったのだ。だがジョバンニが立ち去ると、アンナはジョバンニが父を殺した男だと気付き、オッターヴィオは彼女を慰める※3

 

ジョバンニの屋敷。村人達で賑わう大広間をよそ目にジョバンニとレポレッロが話している。ジョバンニは「夜明けまでに俺のカタログに1ダース名前を増やしてやろう!」と意気込んでいる※4

一方でツェルリーナはマゼットに、ジョバンニに誘惑されそうになったことを弁解している。マゼットは聞く耳を持たなかったが、ツェルリーナは彼の機嫌をうまく取り、仲直りする※5

 

屋敷の大広間では、ジョバンニがその欲望を行動に移そうとし、早速ツェルリーナを部屋へ連れ込もうとする。だが、そこには仮面を付けたエルヴィーラ、アンナ、オッターヴィオらが密かにパーティーに参加しており、ジョバンニに皆で詰め寄る。

追い込まれた彼はレポレッロを身代わりにしようとし、会場に混乱が広まった隙を見てレポレッロと共に逃げ出す。

 

第二幕

散々な目にあったレポレッロ、ジョバンニに暇をもらおうとするが結局は彼に丸め込まれている。そんなジョバンニの次の狙いはエルヴィーラの女中。日も落ち、灯りも少ない夜。レポレッロと服を交換し、レポレッロがエルヴィーラを連れ出し、ジョバンニはその間に女中をハメるという手はずだ。

だが、そこへマゼットが村の人達と共にジョバンニを殺そうと意気込みながらやってくる。まだレポレッロの服装をしていたジョバンニは、レポレッロのフリをして偽の情報で彼らを散開させ、マゼットと2人きりになると彼を痛めつけ、去っていく。

 

その頃ジョバンニのフリをしながら、エルヴィーラとデートをするレポレッロ。気まずい彼だったが、さらにまずいことにアンナとオッターヴィオと出会ってしまう。逃げようとする彼だが、マゼットとツェルリーナもそこに現れなす術がない。ジョバンニを恨む4人に殺されそうになるレポレッロ、彼をジョバンニだと思い込み命乞いをするエルヴィーラ。これに耐えきれなくなったレポレッロはついに正体をあかし、皆は呆れてしまう。

 

真夜中。レポレッロとジョバンニは墓場で待ち合わせをしていた。すっかりまいってしまったレポレッロだが、ジョバンニは依然変わらぬまま。すると、墓場にあった石像が話しかけてくる。これを面白がったジョバンニは、石像を夕食へ招待する。

屋敷へ戻った2人は、早速食事の準備を始める。そこでは流行の音楽も演奏されており、ある音楽を聞いて「これは有名な曲だ」とジョバンニもその演奏を楽しむ。先に食事を始める2人、そこへ再びエルヴィーラが訪れ、彼に改心するように懇願する。だがそれを聞き入れようとしないジョバンニ。

そこへ新しい来訪者が訪れる。人の物ではないその気配にエルヴィーラは逃げ出し、レポレッロはおびえてしまうが、ジョバンニは怯まなかった。扉を開けると、そこにはあの石像が立っていた。彼へ部屋に入ると、ジョバンニに懺悔と改心を迫る。頑なににそれを断るジョバンニ。だが、彼の心には初めて恐怖が宿っていた。石像の手をとるジョバンニ。彼はもう後戻りが出来なかった。石像が消えると地獄への扉が開き、彼は引きずれ込まれていく。

 

彼の叫び声と姿が消えると、レポレッロはじめ、登場人物が皆現れる。レポレッロからジョバンニに起きた事を聞くと、一同アンサンブルで「これが悪事を行うもののなれの果てだ」と歌い幕が降りる。