16世紀後半、イタリア、フィレンツェ。

現在はトスカーナ州に位置し、広大なアルノ川とルネサンスの風が流れるこの地で、知識人達は古代ギリシャの演劇の復興を目論んだ。

この知識人達の集まりは”カメラータ”と呼ばれ、彼らはオペラを創成した。

 

Camerata Project

目が離せない団体や演奏家というものがある。新しい情報が発信されると、次はどんなころとしてくるんだろう…!と。

芸大生を中心としたまだ発足から1年足らずの学生団体が、オペラ「ラ・ボエーム」を2017年3月23日、彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで全幕公演を行った。演奏形式ではなく、フルオーケストラ、字幕付きという本格的なオペラ公演である。

オペラ公演というのは非常に難しいものだ。社会人を中心としたアマチュアオペラ団体でさえ、金銭的な面はもちろん、多くの困難の先にオペラを上演する。公演はほとんどが赤字。財政的な理由で消えていくオペラ団体も少なくはない。

そんななか、学生、芸大生を中心としたこのCamrerata Projectはクラウドファンディングを活用することによって、多くの苦労はあっただろうが、他の団体よりも確実に、スマートにオペラ公演を成功させた。

今回は、Camerata Projectの発起人の一人であり演出の角直之にお話をうかがってきた。

 

–まず、Camerata Projectとはどんな団体なのですか?

「Camerata Projectは、芸大生主体のアートマネジメント団体「空間創造 Oto」をもとに、去年の4月に発足したオペラ団体です。「オペラの可能性を広く追求していく」ことを目的としています。」

 

–先の3月23日に行われた「ラ・ボエーム」公演についてお話を聞かせてください。

「「ラ・ボエーム」公演は、Camerata Projectのオペラ公演としては第1回目にあたるものであり、昨年度の芸大生の卒業公演という意味合いもありました。ですが、東京音大生や昭和音大をはじめ、他の音大生の方も出演されています。クラウド・ファンディングを活用している点もこの公演の特徴です。」

 

–クラウド・ファンディングは、近年はベンチャー企業等で活用されているものですが、それをクラシック、しかもオペラの分野での活用はどのようなものでしたか?

「私の在籍していた芸大ではクラウド・ファンディングを活用した公演等が元々行われており、身近なものではありました。結果として多くの方々にご支援頂き、クラウドファンディングを活用したオペラ公演に手応えは感じています。今後やっていく上で、支援してくださる方々へのお礼となるリターンの工夫が必要だとは思いますが。」

※筆者注 クラウド・ファンディングとは、クラウド(群衆)、ファンディング(資金調達)を合わせた言葉であり、個人もしくは団体が主にネット上で、ある組織や団体に資金や財政面での支援をすること。要は出資であり、個人や小さな団体が商品開発等の資金を集めるために不特定多数の人から資金を募集する。出資した人には、何かしらの見返り(商品やオリジナルグッズの提供等)があるのが一般的。

 

–Camerata Projectの団体としての特色や今後の展望を教えてください。

「オペラの可能性を広く追求していく」というのがCamerata Projectの目的であり、今回の「ラ・ボエーム」公演の前に、「オペラOpera×室内楽 MusicaDaCamera Vol.1」というコンサートを行いました。オペラのコンサートというと声楽家が歌うのが一般的ですが、このコンサートでは、永井秀和氏によるフルート、ファゴット、ヴァイオリン、コントラバス、ピアノのための《ラ・ボエーム》など、オペラを編曲した室内楽作品を演奏しました。つまり、オペラのコンサートでありながら声楽家がいないのです。

プロジェクトという体裁をとることにより、オペラの様々な可能性に挑戦することが出来るのが私達の強みでもあります。今後もオペラ上演や室内楽公演はもちろん、様々な形でオペラの新しい形にに挑戦する予定です。既に構想は練ってあるので楽しみにしていてください。」

 

–ありがとうございました!

 

角氏は昨年度に東京藝術大学音楽学部学理科を卒業されたばかり。非常に落ち着きがあり、彼の話す時、書いた時の言葉の節々からは知性とユーモアが感じられた。オペラに関しての豊富な知識と愛情、そして若い発想、それらから生まれるアイデアは新しいながらも、オペラへの敬意が感じられるものばかりだった。

今回、Camerata Projectに取材にうかがって感じたのはこのようは芸術的観点、そしてクラウド・ファンディングを活用したスマートなオペラ公演というビジネス的観点をどちらも合わせもった団体だといことだ。

 

オペラの公演、オペラ団体の運営には言うまでもなく芸術的な目線と運営的な目線、このどちらが欠けても成り立たない。正直なところ、露と消えていく団体の特徴は芸術的な目線しかないことだ。バレエ・リュスの祖セルゲイ・ディアギレフ、メトロポリタン現支配人ピーター・ゲルブなど優れた興行師、劇場支配人は常に2つの目線を兼ね備えている。

その点、Camerata Projectは学生主体の団体ながらも既に2つの目線をしっかりと備えており、それに対しての工夫も行っている。ビジネスの世界では、クラウド・ファンディングを活かして起業しようとする人もいるが、そもそも成功しない、数年で廃業、という例も少なくはない。

 

クラウド・ファンディングは今後もクラシック界で活用されていくことだろうが、今までと同じ様に創意工夫なくしては有効活用が出来ない。だが新しく柔軟な発想があれば優位性を保てる時代になってきた。今後はそのような団体が生き残っていくことだろう。Camerata Projectには是非、その先駆けとなってほしいと思う。

そして、そんなCamerata Projectの公演が5月3日に行われる。詳細は下記から、興味が少しでもある方は是非。

 

CamerataProject主催公演
CamerataProjectーオペラOpera×室内楽MusicaDaCameraーVol.2

2017年5月3日19時00分開演
日暮里サニーホール コンサートサロン(JR日暮里駅南改札より徒歩4分)
全席自由1800円

曲目
ヴェルディ:弦楽四重奏ホ短調
ヒンデミット:午前 7 時に村の井戸端で 二流楽団が初見で演奏する「さまよえるオランダ人」序曲
リスト:リゴレット・パラフレーズ S434/R267
ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》より「イゾルデの愛の死」(ピアノ五重奏版)

出演
中添ゆきの(ヴァイオリン)
吉本萌慧(ヴァイオリン)
村松ハンナ(ヴィオラ)
饗庭萌子(チェロ)
梨本卓幹(ピアノ)

澤村杏太朗(音楽監督)
角直之(企画)
市川桜子(制作)

チケットのご予約・お問い合わせ:camerataproject@gmail.com

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