〜オペラを上演するオペラ〜

歌劇「ナクソス島のアリアドネ」

作曲家:リヒャルト・シュトラウス
初演:1916年10月4日  ウィーン宮廷歌劇場
言語:ドイツ語




 

「ナクソス島のアリアドネ」は数あるオペラのなかでも異色の作品です。

というのも、このオペラの構成は第一幕や第二幕、などではなく、「プロローグ」と「オペラ」の2つに分かれています。プロローグでは、ある劇場でオペラを上演しようとするまでを描き、オペラでは実際に「ナクソス島のアリアドネ」が上演されます。

この作品は、ツェルビネッタの超絶技巧のアリアをはじめ名曲が多く、オペラが上演されまるまでを舞台上で行われるなどの点でシュトラウスの作品のなかでも人気の作品です。また、題材となっている「アリアドネ」はギリシャ神話からきており、まさに古典的なオペラの題材といって物語となっています。

このオペラを楽しむには、まずは、ギリシャ神話の方の「アリアドネ」が必要となるので、まずはそちらのお話から

 

アリアドネと、聞くとあまり馴染みがないかもしれませんが、ミノタウロス、と聞くと聞き覚えのある人もいると思います。そう、脱出不可能と言われた迷宮に閉じ込められた化け物です。迷宮があったとされているのはクレタ島。そこのクレタ王の娘がアリアドネなのです。また、ミノタウロスはアリアドネの母パシファエと雄牛がポセイドンの力によって交わって出来たしまった存在です。

ミノタウロスはテセウスによって討伐されますが、アリアドネはテセウスに恋をしており、彼に毛糸を渡し、その紐をたどることで迷宮から脱出したと言われます。「アリアドネの糸」とはこの時の糸のことなんですね。そして、無事に彼らは結ばれることになります。ですが、駆け落ちのようにクレタ島を逃げ出しテセウスの故郷へ向かう途中、ナクソス島に立ち寄ったところで、アリアドネはテセウスに捨てられてしまいます。

 

といったのがギリシャ神話のアリアドネです。「ナクソス島のアリアドネ」では、幸せだったはずのアリアドネがナクソス島に置き去りにされたところから話が始まります。

また余談ですが、この作品にはバッカスという人物が登場します。彼は物語の後半における重要な人物なのですが、バッカスとはギリシャ神話における酒の神のこと。ワインを発明したとも言われており、そこから変容と再生を司る神として扱われています。

 

【主な登場人物】

音楽教師(バリトン):劇中劇オペラ「ナクソス島のアリアドネ」の公演責任者

オペラの作曲家(ソプラノ):音楽教師の弟子で、「ナクソス島のアリアドネ」の作曲者

プリマドンナ(ソプラノ):アリアドネを演じるプリマドンナ

ツェルビネッタ(ソプラノ):喜劇団のマドンナ

バッカス(テノール):アリアドネに生の喜びを与える「ナクソス島のアリアドネ」の登場人物




 

あらすじ

プロローグ

ある屋敷の晩餐会。豪華なパーティーが開かれている。今夜、この晩餐会では、出し物として「ナクソス島のアリアドネ」というオペラが上演されるととになっており、その準備が進んでいる。

予定されいる「ナクソス島のアリアドネ」はオペラ・セリアという悲劇的オペラ、だがそこにツェルビネッタらが出演する喜劇作品も上演するという知らせが舞い込む。格調高いオペラ・セリアと低俗な喜劇を同じ日にやるのは許せない、と公演の責任者の音楽教師や「アリアドネ」の作曲家は反対する。

だが、そこへさらに悪い知らせが入る。屋敷の持ち主、晩餐会の主催である伯爵の指示で、この2作品を同時に上演することが決まる。

驚き反対する「アリアドネ」側の音楽教師や作曲家、一方でツェルビネッタ達はこの提案に乗り気で作曲家達を説得し異例の「アリアドネ」を上演することになります。

 

オペラ

ナクソス島に取り残され、悲しむアリアドネ。神話的な精霊たちや、急遽加わったツェルビネッタ達の仲間が慰めようとするが彼女には意味がない。ツェルビネッタも彼女を元気づけるために歌うが、アリアドネとツェルビネッタの恋愛観はかけ離れておりそれも知らぬ顔※1

アリアドネが洞窟の奥へ去ると、今度はツェルビネッタ達の喜劇が始まり閑話休題。バッカスがアリアドネのもとへ現れ、彼女はバッカスを自分を捨てたテセウスと一瞬見間違えるが、彼を死神だと信じて死を覚悟する。アリアドネは死を望むが、バッカスの魅力、接吻により生への希望を再び見いだし、彼らは幸せな時を歩むために洞窟の奥へと消えていく。

解説

独特な作りの「ナクソス島のアリアドネ」、前半のプロローグでは、オペラを上演するまでに起こりうる様々な問題が舞台上で起きている。それはウィットに富んだ台詞やメロディーで彩られており、実際に舞台裏に関わる身としてはなんとも言えない気持ちになります笑

このオペラの台本はフーゴ・フォン・ホフマンスタールという台本作家によって書かれています。音楽の世界に生きるシュトラウスと演劇の世界のホスマンスタール、この作品は彼らの2つの世界の融合ともとることが出来ます。今までに例がない構成のため、新しい境地を狙っての事だったのでしょう。そのような新しい試みに合わせ、シュトラウスの甘美で華麗な音楽のおかげもあり、ドイツ・オペラを代表する作品となりました。

演劇的な部分も含まれているオペラですので、公演を見る際は演出家で公演を選ぶのありですね。




 

有名曲

※1偉大なる王女さま

ツェルビネッタが、後半の「オペラ」のシーン、劇中劇の中でアリアドネに向けて歌う歌。超絶技巧の曲として、モーツァルトの「魔笛」夜の女王よりも、長く技巧的なシーンが続きます。夜の女王と並んで超絶技巧の代表曲ですね。

アリアドネとは対照的なツェルビネッタが、悲しみにくれるアリアドネの心持ちを変えようと歌います。