『能×オペラ「隅田川」』本番直前稽古レビュー

2017年3月20日に本番をむかえる、『能×オペラ「隅田川」』

全く新しい芸術作品として、期待の高まる今公演の本番直前の稽古にお邪魔し、作品作りの中枢でもある重要無形文化財総合指定(能楽)保持者である佐野登氏、第74回日本音楽コンクール第1位の志田雄啓氏、両者へのインタビューも行うことが出来た。改めて、この場で感謝を申し上げたい。

 

さて、今公演は3部構成となっており、第1部と第2部には能である「胡蝶」とクラシックであるフォーレ作曲「レクイエム」(抜粋)が演奏され、第3部は能×オペラとして、能の名作として名高い「隅田川」を能とオペラを融合させて上演する。

第1部の能「胡蝶」は能の有名作の1つであり、第2部のフォーレ作曲の「レクイエム」はやはり有名であり、モーツァルト、ヴェルディと並び三大レクイエムとして言われているものだ。

 

今回、主催である荒川区芸術文化振興財団(以下ACC)は、2013年以降「あらかわ舞台芸術創造プロジェクト」として、このような能とオペラを融合した非常に意欲的な作品に取り組んでおり、4回目となる今回は、能の名作「隅田川」に取り組む。

 

「荒川区から新しい芸術を世界に発信すべく取り組んできました。一方、今プロジェクトでは、ワークショップにも意欲的に取り組んでおり、今年度は区内小学校2校でアウトリーチ(出前授業)を実施しました。また、今公演の第1部、第2部のそれぞれの能と声楽の演奏は、一般参加者らが参加してきた一連のワークショップの成果としての発表の意味合いも兼ねています。」

とACCの担当者は語る。

 

さて、今回は3月20日(月・祝)に本番をむかえる『能×オペラ「隅田川」』の本番直前の稽古を、オペラ・ファシリテーターである田実が見学してきた。

 

第1部の「胡蝶」、第2部の「レクイエム」は、重要無形文化財総合指定(能楽)保持者である佐野登氏、第74回日本音楽コンクール第1位の志田雄啓氏がそれぞれ能と声楽を一般参加者に発声から教え、その一般参加者らが実際に能やレクイエムを上演する。

こちらの稽古はほとんどが全く素人である一般参加者に、基礎となる発声から教え、指導者の人柄が感じられる稽古であった。

 

そして、第3部にあたる「隅田川」の稽古。この稽古の風景は全く初めて見るものだった。

能の舞と謡、声楽、オーケストラの音。様々な舞台芸術に関わる機会のあった筆者だが、これらが1つの場所で、完全に同時に存在する舞台には全くの新しさを感じると同時に、懐かしさを感じるものがあった。

 

能とオペラ、日本とイタリアで生まれた全く異質のものが密に絡み、合わさりあう。その調和に違和感はなく、むしろ懐かしさも覚えてしまう。これは日本人だからこそ感じられるものであり、日本人でなければこの舞台は作れない。そう感じざるを得ないものであった。

 

まさに「能×オペラ」、そして新しい芸術の創造、を体現している舞台であることは間違いない。

能の舞を目にし、能の謡と声楽が調和が完全に調和した音を聞いた瞬間の衝撃は忘れようがない。

 

 

最後に、今プロジェクトの中枢でもあり出演も務める佐野氏、志田氏の両者に今公演の想いを伺ってきた。

 

声楽家として研鑽をつみながらも、芸大の大学院に在学時より能へ深い興味を感じていた志田氏、能の動きを取り入れた舞台に関わった経験から、この「能×オペラ」の一環の企画や公演をプロデュースした同氏は

「私自身、能の仕舞いを学んでいた時期があり、『能×オペラ「隅田川」』に出演する歌手はもちろん、作曲家や指揮者らにも能の稽古に参加するなど、能に関する知識や感覚の共有を行っています。「隅田川」の上演にあたり、台本を作成したのですが、佐野氏と幾度も話し合いを重ており、まさに能とオペラの垣根を超えた作品となっています。」

と語った。

 

同じく芸大出身の能楽師であり、監修、振り付けも行った佐野氏は

「能には数字化出来ない”間”というものがあり、こういった感覚は文化ごとに違っている。オペラは西洋のものであり、それを日本人が作る場合、そういった日本の文化的な感覚を知った上で作品を作りたい。そのために能をベースに置いて今回の舞台はお互いをしっかり理解し合いながら作り上げた。こういった日本独自の、自分達の文化の感覚を取り入れた作品は、海外で日本の作品として十分に通用する作品になり得る。」

 

と語り、また観客の人へ向けて

「能しか見たことがない人、オペラだけしか見たことがない人、様々な人がいると思うが、難しいことを考えずに、ただただ感じて欲しい。そして新しい発見をしてもらえればと思う。」

とも語ってくださった。

筆者にも全く想像のつかなかった「能×オペラ」。確実なのは、この作品は唯一無二のものであることだ。今回は本番直前の稽古の見学ではあったが、本番ではさらに高い次元に達するはずであり、そのような作品に触れることで、多くの新しい発見を感じられるだろう。

 

 

公演詳細

日時:2017年3月20日(月・祝) 16:30開場 17:00開演

場所:サンパール荒川大ホール

料金:指定席4,000円 自由席3,500円

取り扱い

電話:町屋文化センター 03-3802-7111

サンパール荒川   03-3806-6531

WEB予約

NPO法人日本声楽家協会 www.nisseikyo.co.jp

ACCホームページ www.acc.arakawa.jp

主催 問い合わせ ACC(公財)荒川区芸術文化振興財団(03-3802-7111)